新・おんがくの時間

様々なジャンルの音楽にあーだこーだ言うブログ。

2016年にこの世を去った、偉大なミュージシャンたちを知ってほしい

 

 

もう昨年になってしまいましたが、2016年は激動の年でした。それは、音楽業界にも言えることです。日本では宇多田ヒカルさんの復活アルバムのリリースやASKAさんの薬物報道など、良いニュースも悪いニュースも多く報じられました。

 

 

では、海の向こう、世界ではどんなことがあったんでしょうか。ボブ・ディランノーベル文学賞を受賞した、なんてのは日本でも話題になりましたが、一番印象に残っているのは、偉大なミュージシャンたちが相次いで亡くなってしまったことです。日本でも永六輔さんが7月にお亡くなりになりましたが、アメリカやイギリスでも多くのミュージシャンの方が帰らぬ人となりました。イーグルスグレン・フライレナード・コーエンも特集したい気持ちは山々なんですが、今回は特に衝撃度の高かった、というより知名度も圧倒的だった3人について紹介したいと思います。

 

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デヴィッド・ボウイ(1947~2016)

 

2016年の初め、1月10日に衝撃的なニュースが世界中に発信されました。それは、その2日前にアルバム「★(ブラックスター)」をリリースしたばかりのミュージシャン、デヴィッド・ボウイの訃報でした。

 

正直私は彼の音楽をある程度しか聞いていなかったんですが、雑誌『NME』がミュージシャンを対象に行ったアンケートでは、「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」に選ばれているような、あまりにも有名だった彼の死には私も驚きを隠せませんでした。しかし、最近の音楽好きな中高生でも曲を聴いたことすらないかもしれません。まあおそらく今の20代後半以降の方々は「ジギー・スターダスト」くらいは知ってるんじゃないかなと思いますが…。なので、少しだけ彼がどんな音楽家で、どんな曲を作ったのかを皆さんにも知ってもらおうと思います。

 

 

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奇抜な衣装に、艶やかなメイク。今の日本のミュージシャンでいうとドレスコーズの志 磨遼平なんかが雰囲気としては似ているかもしれません。

 

ボウイは1970年代にイギリスで流行したグラムロックという音楽ジャンルの中心人物でした。男性でもきらびやかで濃いメイクを施し、中性的かつSFや古い映画を彷彿とさせるファッション性を持ったミュージシャンが、宇宙的でいてシンプルなビートの音楽を演奏するというものです。日本でも時を同じくして流行していたそうですね。

 

グラムロックというジャンル自体は衰退していきますが、ボウイ自身はそれだけにとどまらない人物でした。自らが作り上げたボウイ像を次々とぶち壊していくような人間だったのです。ポップロックプログレ、ファンク、ダンス、アンビエント、テクノ…常に変化を求め、それでもなおかつ成功を続けてきた音楽家、それがデヴィッド・ボウイでした。また映画「地球に落ちてきた男」をきっかけに俳優としても活躍を果たし、彼の活動は多岐にわたりました。

 

彼は最後のアルバム、「★(ブラックスター)」においても1曲目の「Blackstar」の10分にもわたる長い時間の中でいくつもの実験的な挑戦を試みたように思えます。この10分間の中での様々な展開は、これからの音楽の未来を想起させるような前衛的なものだと感じました。…しかし、彼は69歳という若さでこの世を去りました。おそらく死期を悟っていただろうボウイは、終わりが近づいてもなお挑戦をやめなかったんだ、と私は捉えます。

 

 

 

プリンス(1958~2016)

 

音楽業界で、天才と呼ばれるような人のことを「ミュージシャンズミュージシャン」と呼称することがある。これは、一般消費者受けが必ずしも良くないとしても、同業者からの評価は圧倒的に高い人物のことを指す。このプリンスというミュージシャンもそう呼ばれる人物の一人でした。

 

ギター、ベース、キーボード、ドラムなど約20種類に及ぶ楽器を演奏でき、作曲・編曲・演奏・レコーディング・プロデュースを大体1人で行う、完璧超人なわけです。そんな彼が4月に亡くなったというニュースが当時日本にも飛び込んできました。死因は、インフルエンザによる苦しみを抑えるための鎮痛剤の多量摂取による中毒死と言われています。それにしても、享年57歳。早すぎる死でした。

 

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プリンスと言えば、私はこの「Purple Rain」が思い浮かびます。彼の音楽性はロックに革命をもたらしたと言っていいと思います。黒人音楽といえばジャズやファンクがありますが、彼はそれらでメインで使われるような管楽器、主にサックスやトランペットの代わりにシンセサイザーを用いました。それが、黒人のプリンスが新たに作り上げた音楽の形であり、それは後にミネアポリスサウンドと形容されます。

 

また、ギタリストとしてのプリンスの評価もとても高いのです。あのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロがプリンスのギタープレイを大絶賛していました。

 

彼のプレイは実に感動的で、素晴らしくメロディックで、生々しく、独創的で魂を揺さぶる。そして、信じられないかもしれないけど、彼は超人的な速さでネックを上げ下げして、パガニーニみたいな速弾きをするんだ。ダルウィーシュみたいに回りながらね。ソロは80小節くらい続いて、テクニックとほのかな激情が、高揚感あふれる、壮大なクライマックスへ向けて高まっていく。ソロの最後の方では、ステージにいるロックの偉人たちの姿がほとんど見えなくなっていた。紫の雲に隠れてね。圧巻だよ。プリンスは、唯一無二の存在だったんだ。

 

トム・モレロ

http://rollingstonejapan.com/articles/detail/25974/2/1/1

 

彼ほどにわかりやすく「上手い」ギタリストもいない。テクニックにしろ見せ方にしろ多くの引き出しを持っていて、絵に描いたようなギターヒーローなのである。しかし、彼がギタリストとして過小評価されている事実もある。それは、何でもできてしまうマルチな才能の弊害なのかもしれない。

 

 

 

また、彼のファッションセンス、いで立ちは多くの人々に影響を与えました。

 

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…これは、まあ、その、おしゃれなのかわかんないですけどね(笑)。

 

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そうそう、これこれ。襟を立てて、胸元を開けてそこから胸毛がちらり。ワイルドかつセクシーなのがプリンスのイメージではあります。とにかく、彼は艶やかでどこか危ない雰囲気を醸し出していました。言うなれば変態、なのでしょうか。それは必ずしも良い影響ばかりではないでしょうが、プリンスを語る上では欠かせない要素の一つではあります。

 

何はともあれ、彼の死はアメリカで大きな悲しみを生みました。連日報道されていた大統領選を差し置いて、プリンスの死は大々的に報じられました。それほどに、彼は偉大な天才的ミュージシャンズミュージシャンと捉えられていたのでしょう。プリンス、という音楽のジャンルはこれからも語り継がれていくはずです。

 

 

 

ジョージ・マイケル(1963~2016)

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早速ですがこの歌を皆さん聞いたことがありますか?おそらく、今年のクリスマスに一度は聴いたんじゃないでしょうか、街中でも良く流れていたと思います。1985年にイギリスのデュオ「Wham!」の大ヒット曲、「ラストクリスマス」です。

 

Wham!」はこの他にも1980年代に多くのヒット曲を連発し、世界的なミュージシャンとして活躍しました。「Wake Me Up Before You Go-Go 」や「Freedom」はCMなどテレビでも流れていたので皆さんも一度は耳にしたことがあるはずです。

 

そんなデュオの片方であり、ソロシンガーとしてもグラミー賞を受賞するなどしたシンガー、ジョージ・マイケルまでもが2016年12月にこの世を去りました。なんと、53歳という若さでした。

 

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彼らの曲のポップさとその容姿でアイドル的な印象が強いため、写真左のジョージ・マイケルがシンガーソングライターであることはなかなか知られていない事実だったりします。なので実際はWham!ジョージありきのデュオなんですが、相方のアンドリュー・リッジリーも彼にとっては欠かせない存在だったようです。

 

彼らは曲がキャッチーであり、歌声は言わずもがな素晴らしく、売れるために必要なものを十分に備えたミュージシャンでした。とはいえ、上記にもある通りジョージの才能の部分が大きく、1986年には解散を発表、そしてすぐにジョージはソロ活動を始めました。

 

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こちらがグラミー賞を獲得したアルバムに収録されている楽曲「Faith」です。こりゃ、売れますね。歯切れのいいアコースティックギター、盛り上がるようで焦らすような憎い構成、そして彼特有のポップな歌声とキャッチーなメロディ。どれをとっても、今聴いてもノリノリになってしまう素晴らしい楽曲です。才能に満ち溢れてますね…。

 

まあそんな彼なんですが私生活では少し問題も。公衆わいせつの現行犯で逮捕されたり、麻薬の使用で逮捕されたり、ちょっとアブナイ一面も。また、彼はゲイであることを公表しています。まあ、見た目からしたら…そうですよね(失礼)。

 

 

私生活は置いておいて、ジョージはシンガーソングライターとしての才能はずば抜けたものがあり、いくつもの名ナンバーを世に送り出しました。Wham!としてもジョージ・マイケルとしても、輝かしい功績を残しました。しかし、そんな彼が12月25日、奇しくもクリスマスに人生を終えました。2016年の終わりに聴く「ラストクリスマス」は一味違った歌に僕には聴こえました。

 

 

 

最後に

 

音楽は確かにレコードやCDという形でいつまでも残り続けます。とはいえ、その音楽を生み出した本人がいなくなってしまっては、本人の声を、歌を、演奏を生で聴くことはできなくなってしまうのです。そして、その時はいつ訪れるのか誰にもわかりません。「できるだけ生で音楽を聴きに行くべきだ」とは言いませんが、もしもライブに行く機会があるなら、そこで聴く音楽をひとつひとつ心に刻んでいくべきだと私は思います。それが、せめてものミュージシャンへの敬意にもなるとも、思います。