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新・おんがくの時間

様々なジャンルの音楽にあーだこーだ言うブログ。

きのこ帝国に出逢えた、この街の名は「東京」

 

 

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「東京」という曲を思い浮かべてください。そう言われたらあなたは、どのアーティストの「東京」を思い浮かべますか?これはあくまで予想ですが、大方は二つに分かれると思うんです。ひとつは、くるりの「東京」。これはこれであまりにも有名ですね、よく地方から出てきた若者が東京に出てきたときに聴いていました、というエピソードを聞く気がします。そして、おそらくもうひとつはきのこ帝国の「東京」ではないでしょうか。他にもサニーデイ・サービスや踊ってばかりの世界、銀杏BOYS。福山雅治にもあったかな…そこは少しあいまいですが、知名度というか曲のインパクト的にはきのこ帝国のこの楽曲が強いと考えます。

 

この前、カウントダウンジャパンで初めてきのこ帝国のライブを見ることができたんです。彼らは2007年に結成して、2008年から活動を開始しているらしく、意外とそこまで若手というわけではないんですが、ここまであまりライブを見る機会もなく2016年を終えようとしていたんです。そこにたまたま年の瀬にきのこ帝国を観れる、正直「東京」くらいしか知らないし、その「東京」すらそこまで聴いたことないし…どんなバンドなんだろう、そんな思いでライブを見ました。

 

シューゲイザーだけど、その一言で片づけられない

 

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結論から言います。圧倒されました。音に、声に、雰囲気に。全てに圧倒されました。ホントに良い意味でポカーンとしてしまったというか。最後に演奏した曲がこの「東京」だったんですが、純粋に心の底から「あ、良いなコレ」と思える曲でした。それと同時に他のバンドとは違って一つ一つの歌や音が叩きつけられるように、突き刺さるようにハッキリとしていたんです。

 

このバンドのジャンルはおそらくシューゲイザーやオルタナに分類されるんでしょう。シューゲイザーの特徴はノイズやディストーションがかかったギターサウンド、それでいて甘いメロディにそっと囁くように歌うボーカル。紛れもなく、きのこ帝国のことですね。ライブでもやはり、ギターサウンドに限らず曲中にそれぞれが轟音で楽器をかき鳴らすシーンが幾度か見受けられました。その姿はどうにもめちゃくちゃカッコいいんですけどね。

 

ただ、ボーカルの佐藤はきのこ帝国の楽曲をどうも、そういったジャンルとしては曲を作っていないらしい。

 

最初からシューゲイザーだと思ってリリースしたことは一度もないんです。歌モノであり、景色や感情を表現するためのツールとして音楽を機能させているだけであって、シューゲイザーやオルタナという音楽ジャンルとしての目的を果たすために音楽をしているわけではないので、ピンとこないんです。何か琴線に触れるものがないといけないと思うんです。きのこ帝国はそういう音楽を作り続けていると思うので、ジャンルのことを言いたい人もわかるんですけど、勘違いしてほしくないのはきのこ帝国は「ジャンルにこだわっているグループではない」ということですね。

 

佐藤千亜妃

(引用元:http://realsound.jp/2015/05/post-3158.html

 

 

彼らの音楽はシューゲイザーに当てはまるようなものであるのは確かでしょう。しかし、それだけでは語りつくせない、言葉には表せないような感情を湧き起こさせるのがきのこ帝国の楽曲な気がするんです。弱すぎず、強すぎない人間のリアルを映し出しているようなボーカル佐藤の声が一番の武器ですし、それがしっかり機能する演奏であり、曲の構成だと思うんです。

 

 

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「東京」の入っているアルバムの二曲目に収録されている「クロノスタシス」。これもとても評判の高い一曲です。曲の中にそこまで緩急や強弱は少なく、言ってしまえば単調な曲とも捉えられますが、繰り返されるギターのリフと決して優しすぎないが、寄り添うように歌うメロディ。いつまでも聴いていられるような心地よさを生み出していますね。これもきのこ帝国の雰囲気が為せる業なのでしょう。

 

 

「猫とアレルギー」で脱皮したきのこ帝国

 

初期に比べると先ほど紹介した2曲の入ったアルバムは若干ポップ寄りに作られていたそうで、ファンからは驚きの声も少なくなかったそう。とはいえ、先ほどボーカル佐藤が言っていた通り、彼らをジャンルで縛るのはお門違いなのでしょう。まあ、ずっと同じスタイルを貫くバンドもいますが、やはり何事にも変化はつきものですし、それが正解なのかどうかは簡単に判断できることではありません。きのこ帝国についてももちろんそう。ただ、個人的にはそのアルバム「フェイクワールドワンダーランド」は凄く好きな作品です。

 

そして2015年11月に発売されたメジャー1stアルバム「猫とアレルギー」では、彼らはさらに可能性を押し広げました。私はこのアルバムが初めて聴いたきのこ帝国のCDになったわけで、リードトラックである表題曲「猫とアレルギー」を最初に聴いた記憶があります。そしてまたもや、「東京」の時と同じような、いやそれ以上の衝撃を受けたのです。

 

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歌詞にしてもメロディにしてもどこかもの悲しさが漂う。ストリングスやピアノ、ギター、ベース、ドラムのそれぞれが合わさった壮大な音が彼らの音楽を形作り、彩る。後半に進むにつれて、決意を示すように力強く歌は、音は奏でられていく。アウトロのギターでわかっていたけれど鳥肌が立つ。

 

決してバンド感が強いわけではない、どちらかというとキャッチ―な楽曲。でも、この楽曲によってバンドは後退ではなく前進しているように感じました。ああ、このバンドに出逢えてよかった。そう思うような一曲でした。彼らの音楽はさらに次のステージへと向かっていくのでしょう。

 

触れなくていい 忘れていいから
ただこの瞬間、こっちを見ていて
あなたの顔や あなたの声が
何度でも思い出して歌うわ

 

(猫とアレルギー/きのこ帝国)

 

 

”今”のきのこ帝国が一番熟している

 

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普通なら最初に初期の曲を紹介するべきなのですが、今回はあえて最後に紹介させてもらいました。その理由は、”今”のきのこ帝国をオススメしたかったからです。もちろん初期からのファンの方もいらっしゃるでしょう、ただ私は初期より”今”のほうが好きなのです。

 

この「ユーリカ」はダークなシューゲイザーというイメージで、先ほどまでのきのこ帝国とは打って変わって暗い印象を持ちます。確かにこれはこれでかっこいいんです、だけど、私は変化していくきのこ帝国の音楽にとても惹かれました。メジャー志向で、曲も段々ポップにしていったという意見もあるようですが、理由はどうあれポップにするのは何もいけないことではないですし、ジャンルに縛られない彼らは誰かに媚びることなく突き進み、結果として素の状態になった音楽がポップだと捉えられた、といえるんじゃないでしょうか。

 

彼らの変化はこの過去があっての変化であって、過去を捨てているわけではありません。全ての曲がポップになったなんてことはないし、むしろ彼ららしさが溢れている曲ばかり。アルバムをリリースするにつれて段階を踏んで熟していって、今が食べごろなのがこのバンドだと私は思います。ぜひ今、皆さんに聴いてもらいたいバンドの一つなんです。

 

 

冬、私はまた、今日もこの寒空の「東京」に降り立ちます。あの歌を聴きながら。

 

 

日々あなたの帰りを待つ ただそれだけでいいと思えた 窓から光が差し込む あなたに出逢えた この街の名は、東京

 

(東京/きのこ帝国)