レキシが好きなら、SUPER BUTTER DOGも聴いてくれ
「縄文土器、弥生土器、どっちが好き?どっちも土器」
この鮮烈なフレーズを皮切りに、日本の音楽界に殴りこんできたレキシ(池田貴史)という人物の人気は、もうすでに全国区となっているのではないか。彼の楽曲は主にファンクをベースに作られているが、あくまで日本人に受けるような遊び心をふんだんに散りばめたものばかりだ。「歴史縛りファンクネスバンド」と称される彼のソロユニットの曲名は「一富士二鷹サンタクロース」「ヤマサキ春の藩まつり」「ピエール中野大兄王子」など、ふざけたものばかりだが、そこはかとないセンスを感じ取ることができる。
今紹介した曲名でお察しの方もいるかもしれないが、彼は曲ごとに様々なアーティストとコラボをしていることでも有名だ。サンボマスターやキュウソネコカミ、椎名林檎や上原ひろみに至るまで多岐にわたるジャンルの精鋭たちと楽曲を作り上げている。しかも、過去には忌野清志郎に楽曲提供をしていたり、彼の話題は尽きない。…のだが、今回はレキシの話をしに来たのではない。
SUPER BUTTER DOG
突然言われても、誰なんだこの人た…あれ?左から二番目…れ、レキシじゃないか!!
というわけで、今回皆さんに紹介したいのはSUPER BUTTER DOG(以降SBDと略する)というバンドである。残念ながら2008年に解散してしまったのだが、未だに根強い人気を誇っている5人組だ。
ちなみに、レキシ以外のメンバーにも現在ソロで活躍しているのがいるのだが、わかるだろうか?右から二番目の竹内朋康は、RHYMESTERのMummy-Dとユニット「マボロシ」を結成している。そして真ん中の白眼鏡をかけた痩せたオリラジ藤森みたいな男、実は現在「ハナレグミ」名義で活躍する永積タカシである。そんな3人を輩出しているスーパーバンドなわけだが、意外と周りにも知っている人が全然いないという状況なので、ぜひこの機会に聴いていただきたい。
底抜けに明るく、底抜けにキャッチー
レキシ同様、このバンドも主軸にはファンクというジャンルがあるのだが、そんな細かいジャンルはどうでもよくなるくらいに楽しくキャッチーな曲ばかりだ。EDMできらびやかに踊るのも悪くないけど、このSBDのポップなファンクでわけわからんくらい踊り狂う方が個人的には性に合ってるからすんげえ好みなのだ。キーボードソロ、ギターソロもしっかり色が濃く作られてるし、ところどころでしっかりキメがあるのもクセになる一つの要因だ。
本場のファンクバンドとかのイメージよりは明らかに明るいのがSBD。なんというか、日本の若者がバカやってるように見えなくもないのだが、そのバカさ加減が絶妙にちょうどいい。童心に戻って歌って踊れるこんなバンドを知らないなんて、勿体ない!
高い演奏力と高い表現力
SBDはライブ映像を見ればわかるが、全員演奏技術は相当なモノだとうかがえる。私事だが、以前大学の部活でSBDのコピーをしていた友人がいるのだが、あのノリを作り出すのは相当大変そうだった。もちろん個々でも苦戦していたように見えた。やはりファンクバンドというのは絶妙な間を作るためのタメや、カッティングのテンポだったり小難しい部分も往々にしてあるのだ。それをSBDはなんてことなくこなしてしまうのだから、やはりプロって恐ろしい。
加えて、こちらの「メロディーの毛布にくるまって」を聴いていただきたい。これは個人的にもとても好きな曲なのだが、先ほどの「コミュニケーション・ブレイクダンス」と一風変わってクールな雰囲気である。静と動がくっきり分かれた曲構成に加え、演奏にしろ歌にしろ、強弱や緩急の上手い使い分けで曲の印象をぐっと大人っぽく変化させている。単調だと思いきや、適所に小刻みな洒落たフレーズが入ってきたりして、曲を通して飽きない作り方をしているなあという印象を持つ、流石。
最高のギャップ、最高のポップ
最初、SBDのメンバーにハナレグミがいたということを知った時は正直ちょっと信じられなかった。私の中でのハナレグミのイメージとSBDの音楽に多少の違いがあったからだ。まあもちろんハナレグミと同じような曲をやってるとまでは思わなかったが、ファンクをやってるのかという驚きが大きかった(ハナレグミに関してもそこまで知らないが)。
しかし、このSBDの代表曲「サヨナラCOLOR」を聴いてようやく合点がいった。これぞまさにハナレグミ、永積タカシらしい音楽だなという印象を受けた。そしてそれをこのSBDというファンクバンドが演奏していることで良さが上乗せされている。先ほどの二曲を聴いた後にこの曲を聴くと、ギャップに戸惑いながらも何故かそのメロディーの美しさと永積タカシの声に、涙腺がやられそうになる。こんな不朽のポップソングを持っているなんて、反則だ。
この曲についてもう少しだけ話させてほしい。この曲は竹中直人が影響を受けて同名の映画を作るまでに至っているというエピソードがある。その映画のラストで流れる「サヨナラCOLOR」は永積タカシと忌野清志郎のコラボなので、ぜひ聴いていただきたい。
さて、この曲は”自分”へのメッセージソングだと私は捉えている。本当の”自分”を出したくても、あえて人間関係や社会的な理由でそれを心の奥にしまい込んでいる人たちはこの世界に大勢いるはずだ。そんな人たちが偽ってきた”自分”に「サヨナラ」する勇気をくれるような、強く背中を押してくれるような曲であると私は解釈した。
サヨナラから はじまることが
たくさん あるんだよ
本当のことは 見えてるんだろ
その思いよ 消えないで
その思いを 僕に見せて
本当の”自分”を否定されるのか怖いから、嫌われるのが怖いから、人は”自分”を偽る。それはとても楽なことで、そんなぬるま湯にはいつまででも浸かっていられる。だけど、それで果たしていいのだろうか。自分のしたいこと、言いたいことを捻じ曲げてでも”自分”を騙し続けるのか。
一度でいいからこの状況から「サヨナラ」してみないか?それがどういう結果を生むのかはわからない、ひどく不安なことだけれど一歩踏み出した本当の”自分”はもっと輝いているに違いない。進むことを恐れないで、立ち止まっているのはやめにしよう。
というわけで。
またもや恒例の自分語りが入って気持ち悪かった方もいるかもしれません、ご意見をください。再考します(笑)。なんだか、歌詞を説明するときにその歌詞に身を入れすぎちゃう癖があるんですよね、受け取り方は個人差があるってのはわかってるんですが。
さてさて、SBDを初めて知った方。いかがだったでしょうか?「このバンドめちゃくちゃカッコいい!!」と思ってくれた方が少しでもいたら幸いなんですが、このバンドはもう見れないという現実にぶち当たると寂しくなります。アーメン。
レキシもハナレグミも(マボロシはあまり聴いたことなくて…泣)とっても素晴らしいアーティストなのでいつかブログに書きたいと思ってるんですが、そのバックグラウンドにこんなにもファンキーでキャッチーでポップなバンドがいたことをぜひ忘れないでいてくれれば嬉しいです。ほいじゃ。