"平成の阿久悠”が贈る、「傑作のジョーク」
大袈裟な話だが、私という人間を語る際に欠かせないバンドがいくつかある。その中でも重要な位置を占めている、バズマザーズというバンドを皆さんご存知だろうか?一般的な知名度はそこまで高くないと思うので、後ほど簡単な説明を入れさせていただくが、今回はこのバズマザーズが2017年3月1日にリリースする4枚目のアルバム『普通中毒』に収録されている「傑作のジョーク」という楽曲についてのレビューまがいをしようと思う。
この曲は、1月28日にyoutubeにPVがアップされた。そして、この記事を書いているのは1月29日である。ちょっと早すぎるレビューかもしれないが、お許しいただきたい。バズマザーズというバンド自体についてもいっぱい語りたいことはあるのだが、今回はまずこの曲の紹介を通してバズマザーズを知ってもらいたい。果たして、このバンドの表題曲となりうる曲なのかは定かではないが、語る上では必須な曲になるに違いないと私は考えている。ぜひ、バズマザーズを知っている人も知らない人も、最後までお付き合いいただきたい。
バズマザーズというバンド
バズマザーズは、2011年に結成されたバンドである。フロントマンであるギターボーカル担当の山田亮一は類稀なるメロディセンスと歌詞の独自性から、自他ともに”平成の阿久悠”という異名を認めている。山田亮一は2004年に3ピースバンド、ハヌマーンを結成しインディーズシーンで人気を博した過去があるため、知名度はインディーズに詳しい方の中でなら、だいぶ高いと思われる。山田はハヌマーンが2011年に活動休止、翌年に解散を発表して、本格的にバズマザーズに身を置いたという経緯がある。
山田亮一が紡ぎだす音楽は、時にヒリついた焦燥感を、時に叙情的な虚しさを持っていたりする、一言では表現できないものである。そして、ハヌマーンにせよ、バズマザーズにせよ、各々それをバンド全体で見事に表現できている。エフェクターでガンガンに歪ませたギター、うねるように動き続けるベース、正確ながらも迫力と爽快さを併せ持つドラム。個々の技術に裏打ちされた楽曲のクオリティが、そこにはある。
ハヌマーンの頃ほどのアングラ感は無いが、未だに牙はしっかりと磨かれているこのバンド。ポップなメロディに殺人的なサウンドをはめ込む。時は経てど、バズマザーズは、山田亮一は全く衰えを見せない。
「傑作のジョーク」とは
さて、先ほども少し紹介した通りこの楽曲は再来月リリースされるアルバムに収録されているもので、私も昨日聴いたばかりである。この曲に対する自分の感情と、SNSでの他人の評価を比較して、色々と思うことがあり記事を書いた次第である。まあ、まず一度視聴していただきたい。
最近になってきて、山田亮一の音楽は変化しつつある、と私は思う。ハヌマーン時代、そしてバズマザーズ初期というのは基本的に激しさや勢いが強い楽曲が多く、落ち着いた楽曲に関しても独特の物悲しさや虚しさを醸し出すような雰囲気があった。だからこそ、バンドのイメージもどちらかというと少し陰鬱な印象が先にあったのだが、現在はポップやカントリー、ラテンのような新しいジャンルの音楽の要素も取り入れた楽曲を発表している。今のバズマザーズのバンドとしてのイメージは決して暗いものではなく、むしろ明るさのほうが勝っているように思えるほどだ。
そんな中で公開された「傑作のジョーク」である。私はどうしても、新曲を聴くときには「殺人的な激しさがあるんだろうな~」とか「鬱っぽい曲なのかな~」とか予想してしまうクセがあるのだが、今回はまたもや良い意味でそれを裏切られた。この楽曲は今までの雰囲気も今現在の雰囲気もどちらのバズマザーズの側面も併せ持つ楽曲な気がしたのだ。
ミドルテンポでポップな曲調で、ギターのサウンドもいつもの様な鋭利さは影を潜めている。「ギタリスト・山田亮一」というより「ボーカリスト・山田亮一」の側面が目立つ印象だ。歌詞もまた、ひとつの物語のように読みごたえがあるものになっている。主人公の人生の虚しさが嫌というほどに伝わって、すべて聞き終わった後には充足感と虚無感が入り乱れていた。
山田亮一の書く歌詞というのは、歌詞というより短編小説のようなものだと捉えている。明確なメッセージ性というより、一つの筋書きの中にいくつもの感情や主張が含まれているイメージである。それの捉え方はやはり人それぞれ違うだろうが、往々にして場末の無常感を匂わせている節がある。もちろん、今回の「傑作のジョーク」の歌詞にしてもそうだ。決してただのハッピーエンドでもバッドエンドでもない、人生のリアルな様が映し出されている。
最後に傑作のジョークをひとつ
人生に行き詰まったある男が、精神科に救済を求めて云う
「何をしても笑えやしないのです」
「忙しない暮らしに疲れたんだね。評判の道化師を観に行くといい」
先生、お気遣いありがとう
でも、その道化師の正体は僕なんです
人間性と音楽性
私は、去年よくバズマザーズのライブを見に行っていた。そのうちの一つのライブに行ったとき、私は衝撃的な事実を彼らのライブMCで知ることになった。元メンバーでありマネージャーでもあった人間の横領事件。1000万という額以上に、その出来事自体にただただ驚き、その後も同じように演奏を続けた彼らを呆然と見ていることしかできなかった。
フロントマンである山田亮一は、ここ数年で雰囲気が変わったように思える。少なくとも、私がライブに行き始めた1.2年前からは確実に変わった。それが、その横領事件と関係しているのかは定かではないが、その前後で変化を感じたのはよく覚えている。前までは近づけない、独特なオーラを持った怖い人というイメージだったが…まあ確かに今も怖いのだが(笑)、物販で少し話した時にも感じた人間性には全くそんなオーラを感じなかった。
それは如実に彼の音楽にも表れていると思う。よく「丸くなった」「大人しくなった」と形容されることが多いが、私は今の山田亮一の姿がとても好きである。脇を固めるシゲマツシン、福岡”せんちょー”大資との3ショットを見ると、どことなく安心するのだ。ライブでも、MCを含めてファンを楽しませようとしている様が、私は尊敬するし、敬愛している。
彼らが純粋に音楽を楽しんでいる様がひしひしと伝わるような、それでいてバズマザーズらしさも失っていない…そんな一曲でもあった。彼らのこれからの快進撃の、始まりの一枚になるであろうアルバム『普通中毒』は、間違いなくオススメである。
俺達が彼に奪われたのは、お金じゃないよ。
「音楽家は立派な仕事である」っていう誇りと尊厳だよ。
それはもう取り戻せたから、バズマザーズは終わらないよ。
そして、もう俺達は迷いなく日本一を目指すよ。
最後に
大分まとまらず、よくわからなかったかもしれませんが、とりあえず「傑作のジョーク」は深く聴きこむべき一曲だということはしっかりと伝わっているでしょうか。PVもぜひちゃんと見てくださいね、ドラムのせんちょーさんの迫真の演技にご注目です。
また近々ライブを見に行く予定なので、そしたらまたバズマザーズ関連の記事を書くかもしれません。やっとこのバンドのことが書けて満足してます(まだ書き足りないけど)。それでは最後に、山田さんのブログに書かれていた一言で締めたいと思います。それでは!
山田亮一をみくびるな。