日本の音楽は”殺された”のではなく、”占領された”のかもしれない
最近の音楽番組で、今までライブハウス中心に活動してきたバンドなんかが出演し始めるという新たな動きが出てきているのは事実だが、やっぱり日本の音楽チャートのトップにいるのはAKBグループであり、ジャニーズである。
このブログを見てくれている人みたいに、ある程度音楽が好き!という人以外は結局テレビでよく流れている音楽しか聞かないし、星野源みたいなちょっとしたブームがあったとしても結局それは長続きしないことが多いのである。音楽好きな人たちにしてみれば「そんなことない!最近はCMとかドラマ、映画でワンオク流れてたりするし!」となるだろうが、そんな音楽好きな私たちの母数は日本全体で考えるとそこまで多くはない。多かったとしても今の彼らは”力”をそこまで持っていない。
ここで言う”力”は単なる筋力とかそういうパワーではない。冷静に考えてほしい、ミュージシャンは活動を続けるためには売れてお金を稼がなければならない。そのためには自分が出したCDを買ってもらい、ライブに来てもらい、物販でグッズを買ってもらい…と地道な努力が必要であり、それはファンの努力でもある。わざわざバイトで稼いだなけなしのお金をはたいて新譜を買うのだ。そしてそれが、ミュージシャンの今後につながる。
しかし。
巷で叫ばれているように、今音楽業界は危機を迎えていると捉えられることが多い。まず、CDが売れない。これが一番の理由である。インターネットの普及で違法ダウンロードが容易にできる世の中になり、最近ではアプリでも無料で音楽が聴けちゃう。「どうせタダで聴けるなら、CDなんて高い金出して買う必要ないな」という考えに至らせてしまったのだ。そう、少し大げさに言えば、今の時代音楽に金をかける必要性がないのだ。
ダウンロードした曲をiphoneに入れて聞ければそれでいい。別にそこまで熱狂的なファンでもないからライブに行かなくてもいいか。と、これはまさに負のスパイラルである。こりゃ、ライブハウスもどんどん潰れていくわけである(これが原因なのかはわからないが)。このように、ファンなどが持っていたはずの、使っていたはずの”力”、端的に言えば財力を消費する意欲は失われつつある。
でも、売れてるバンドもいっぱいいるだろ!!
とはいっても、ここ数年のなかでは2016年は結構音楽的には良い変化があった年だと私は考える。先ほども言ったように、音楽番組にそれこそRADやマンウィズ、岡崎体育なんていう下北でのさばってた大王みたいなやつまでもが出演するようになり、プロモーション効果は絶大にあったことだろう。いくつものバンドやアーティストがメジャーな存在へ羽ばたいていっている姿を目の当たりにした気がする。
音楽フェスなんかも多く開催されて、しかも大盛況だし、ツイッターを通じて新しいバンドを探す手間も簡単になっている。おいおい、タイトルなんなんだよ!殺された?全然音楽シーンは盛り上がってるじゃねえか!!
…と言いたいところなんですが。やっぱり、音楽好きの界隈で盛り上がっているだけであって、日本全体で見ると大したことないんですよ。まず、音楽に対する関心自体が低い。紅白でもイエモンの出場で狂喜乱舞してた若者なんてマイノリティですよどうせ。エマのギターちっちぇえよ!もっと出せよ音量!!みたいなこと言ってたの俺だけ説。
夏の大型ロックフェス、ROCK IN JAPAN FESTIVAL。2016年の来場者数は4日間合計で約27万人。1億分の27万です。27万だけ聴くと凄いけど、まあこんなもんなんですよ。いや、凄いけどね、この来場者数。
殺された?というより…
今が盛り上がっていない、とは言いません。でも、日本全体で見ると音楽の勢いは昔に比べるとまるでないように思えてしまいます。…え?昔を知らないくせにそんなこと言うな?この懐古厨が?まあまあ、落ち着いて。ちょっとこちらをご覧になってくださいよ。
1
235.1
LOVE LOVE LOVE
DREAMS COME TRUE
1995/7/242
210.3
WOW WAR TONIGHT
~時には起こせよムーヴメント~
H Jungle with t
1995/3/153
187.0
HELLO
福山雅治
1995/2/64
183.5
Tomorrow never knows
Mr.Children
1994/11/105
179.2
シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
Mr.Children
1995/8/106
173.5
Hello,Again~昔からある場所~
MY LITTLE LOVER
1995/8/217
171.6
奇跡の地球
桑田佳祐&Mr.Children
1995/1/238
166.5
TOMORROW
岡本真夜
1995/5/109
159.4
ロビンソン
スピッツ
1995/4/510
158.8
LOVE PHANTOM
B'z
1995/10/11(引用元:http://www.musictvprogram.com/corner-ranking-1995.html)
見づらくてすいません。これは、私の生まれた1995年の年間CDシングル売り上げランキングです。ミスチルが結構多いですが、多様性のあるランキングになってますね。マイリトルラバーとかあほみたいに懐かしいですね。小さいころによく聞いた覚えがあります。この他にも少し下の順位にTRFやシャ乱Qなど個性あふれる面々が揃ってますね。CDの売り上げ枚数を見ても、全体的にばらけてる上にミリオンヒットが多数出ていることがわかります。J-POPの全盛期ですね。
では、今のランキングを踏まえた上で、2016年の年間CDシングル売り上げランキングを見てみましょう。
1位
1,519,387
AKB48「翼はいらない」
16/06/012位
1,294,962
AKB48「LOVE TRIP/しあわせを分けなさい」
16/08/313位
1,213,660
AKB48「君はメロディー」
16/03/094位
1,202,533
AKB48「ハイテンション」
16/11/165位
910,811
乃木坂46「サヨナラの意味」
16/07/266位
851,229
乃木坂46「裸足でSummer」
16/11/097位
828,533
嵐「I seek/Daylight」
16/05/188位
828,315
乃木坂46「ハルジオンが咲く頃」
16/03/239位
541,121
嵐「復活LOVE」
16/02/2410位
471,619
嵐「Power of the Paradise」
16/09/14
…(唖然)。
調べてみるまではここまで酷いとは思っていませんでした。乃木坂46をAKBグループとして考えた場合、トップ10の中の7つがAKBグループです。しかも残り3つは嵐、ジャニーズですね。これは殺されたというよりもはや”占領”です。流行とかいうレベルじゃありません。握手券というおまけの力で、他の追随を全く許していない状況です。ワンオクだったりRADだったりも頑張っているけど、どうしてもこいつらの牙城は崩せそうにありません。というか、先ほどのランキングと比較すると、圧倒的にCDの売り上げ枚数が少ない。消費者の購買意欲が薄れてしまっていては下剋上すら起こせません。
ちなみに、このランキングで初めてジャニーズ、AKBグループ以外が出てくるのが27位のハイスタです。どうなってんねん、日本の音楽チャート。27位て…。
音楽チャートって、意味あるの?
こんな感じでランキングを参考に考察をしてきたわけですが、正直こんなランキング誰が見てるんだよ?意味あんのかよ?という意見もあると思います。しかし、このランキングは現在の日本の音楽の状況が一目でわかるものでもあるのです。
確かにここに星野源はないしRADもありません。そして、いずれ公式に発表されるであろうこのランキングを見て「なんだ、またAKBだらけか。つまんねえの」と言って匙を投げてしまわれかねない。すると、上位層のせいで、下まで養分が届かない状況になってしまう。このままでは根の方から腐っていってしまうわけです。興味という大切な感情を殺しにかかっています。
色んなミュージシャンがランクインしていて、その中からお気に入りを見つける、なんてのは楽しい作業だったりするもんです。それなのに、一部のアーティストによる”占領”によって一般大衆の「新しい音楽との出会い」が阻まれてしまっているのは由々しき事態です。
私は微力ながらこういったブログで音楽のニュースを取り上げ、少しでも多くの人に色んな音楽を知ってもらうのが力になると信じています。口コミって目には見えないけど、凄いものだと思ってますしね(笑)。
音楽の将来のためにも、小さなことからコツコツと。巻き返してやりましょう。